リウマチが分かる7つのポイント(5)

6,将来はどうなるの?

「指や手首の痛みの原因がリウマチだと診断がついて、お薬も始まって良かったな」と痛みの理由が分かり、治療も始まると、少しホッとされるかと思います。ただ、それと同時に「これからどうなるんだろう?」「今まで通りの生活ができるのかな?」など、将来に対する不安を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
そんな前向きに治療に取り組まれつつも、「今後の事がちょっと気になるな」という皆様からよく頂くご質問にお応えさせて頂ければと思います。少しでも、皆様が安心してリウマチ治療に取り組まれる事のお役に立てれば、うれしいです。

①しっかりリウマチの治療をして、手指も変形せず将来も安心

「私のリウマチってどんな病気なんだろう?」とお思いになり、インターネットなどで少し調べてみると、手の指が曲がって変形された写真が出てきて、大変ご不安になられた方もいらっしゃるかもしれません。
そんな皆さん、安心してください。現在の新しいリウマチのお薬で治療を続ければ、昔のようにリウマチが進行して手指が曲がってしまう事は、ほとんどありません。

確かに、一昔前まではリウマチのお薬といっても数が少なく、またその効果もイマイチでした。多くの方が、お薬で治療していても、完全にリウマチの痛みや腫れを無くす事が出来ず、徐々に手指や足の変形が進行されておりました。実は、私の祖父も長年リウマチを患っていたのですが、当時は現在のような効果のあるリウマチの薬が無かったので、徐々に手や足の指が変形をしていきました。「指が曲がっちゃったから、お箸を持ったり、靴下をはくのに、時間がかかるんだよ」と、当時小学生だった私に、祖父が教えてくれたことを覚えております。
しかし、現在は「メトトレキサート」、「生物学的製剤」、「JAK阻害剤」という新しい性能の良いリウマチのお薬が沢山登場し、これらのお薬で治療することで、ほとんどのリウマチの方が、痛みが良くなるだけでなく、リウマチの進行をも完全に止める事もできるようになりました。 さらに、昔はレントゲン検査で手指に変形が出始めてからリウマチの診断をしていたのですが、現在では「関節エコー検査」が登場し、手指に変形が出る前にリウマチの診断ができるようにもなりました。
関節エコー検査を使って早くにリウマチを見つけ、新しいお薬で治療してリウマチを良くして、そのお薬をしっかり続けて頂く事で、多くの方がリウマチになられる前と同じような手や指のままで、何十年もいられる事ができますので、どうぞご安心頂けると幸いです。

②リウマチが良くなっても、お薬は継続しましょうね

リウマチの進行を抑える為にも、またリウマチの痛みや腫れがぶり返さない為にも、「リウマチが良くなった後も、お薬を継続して頂く事」が何よりも大切になります。
「もし可能であれば、お薬が止められればいいな」と思われるお気持ち、よく分かります。確かに、風邪薬や花粉症のお薬のように、症状が良くなれば止められるお薬もあります。しかし、これらの病気はリウマチとは事情が異なります。風邪などの感染症は、体に入ったウイルスや細菌がいなくなれば、原因も症状もなくなり一件落着。もうお薬もいらなくなります。また、花粉症のお薬も、花粉が飛んでいる時期を過ぎれば、病気を引き起こしていた花粉がなくなるので、原因も症状もなくなりお薬もいらなくなります。
しかし、リウマチの場合には、もともと体の中にいる免疫細胞が、様々な原因が重なり手足で暴れて痛みを起こす病気になります。しかも、風邪や花粉症と違って、お薬で治療をしないとリウマチが良くなる事は少なく、そのままにしておくと手足の骨が破壊されて変形を起こし、どんどん進行してしまう病気です。この暴れている免疫細胞を、リウマチのお薬は大人しくさせて悪さをしないようにしてくれます。この状態を寛解(かんかい)と言います。この寛解(かんかい)は病気が治った治癒(ちゆ)とは異なります。寛解は「お薬を使っている状況で、リウマチの進行がしっかり止まってますよ」という意味になります。 もし、リウマチのお薬を止めてしまうと、いったん大人しくなっていた免疫細胞達も「口うるさいお薬がいなくなったから、またみんなで悪さをしちゃおうぜ!」と、暴れ出してリウマチを再発してしまいます。
そうすると、もちろん手足の痛みが再発しますし、骨が破壊されて手足の変形も進んでしまう事があります。
ぜひ皆様には、リウマチのお薬をしっかり継続して頂き、将来にわたってリウマチの再発や変形の不安がない、安心な生活を送って頂ければ嬉しいなと思います。

③定期的に通院して、リウマチやお薬の状況を確認する事が大切です

リウマチの治療は、主治医の先生のご提案どおりに、月1回など定期的に受診し、診察や検査を受けて頂く事がとっても大切です。 リウマチの治療を始められると、「先月から指が痛いけど、リウマチがまた出てきちゃったのかな?」とご不安を抱く事もあります。皆様も感じられているかもしれませんが、リウマチの状態は日々変化いたします。なので先月まで治まっていたリウマチが、今月になって急にぶり返してしまう事もあります。 しかし、手足の痛みの原因の全てがリウマチではなく、筋肉の痛みや腱鞘炎、加齢の痛みや、使い過ぎの痛みだったりもします。 なので「痛みが再発した原因は何なのか?」によって、リウマチのお薬をパワーアップさせた方がよいのか、それとも湿布や痛み止めで様子を見たほうが良いのかなど、治療方法が大きく変わってきます。 そこで、定期的に受診され診察や血液検査、場合によっては関節エコー検査を行うことで、その時のリウマチの状態や痛みの原因に合った治療を、主治医の先生と一緒に調整されていく事がとても大切になります。

また、リウマチのお薬は、薬局さんで市販されているような胃薬や花粉症のお薬とは違って、特殊な免疫を少し抑えるお薬になります。なので、どうしても、吐き気や口内炎などといった飲み合わせのトラブルが起きる事があります。また、そういった自覚症状は無いのに、実は肝臓や腎臓の数値が悪くなっていたり、貧血が進んでしまう事も、たまにあります。これらのトラブルは、最初の頃にご自分で気づく事はとても難しく、逆に「なんか最近体調が悪いなぁ」と症状が出た時には、かなり進行し悪くなってしまっており、場合によってはすぐに大きな病院に入院が必要な状況だったりします。ですので、リウマチの治療をされている皆さんは、体調が良い時だからこそ、月1回定期的に血液検査や診察を行い、知らず知らずのうちに体の中で問題が起きていないかを確認する事が大切です。 仮に、リウマチのお薬の影響で肝臓や腎臓の数値が少し悪くなってしまっても、血液検査や診察でそれに早く気がつけば、少しお薬を減らしてもらうなどの対応で済む事が多いので、ご安心くださいね。

④リウマチでも仕事OK、妊娠出産OK!

リウマチを発症されるのは、30-40歳代の女性が一番多く、20歳代で発症される方も多くいらっしゃいます。多くの方が、お仕事や家事で活躍されていたり、これからご結婚やお子さんを考えられていらっしゃったりします。
そして皆さんおっしゃるのが、「自分がリウマチになった事によって、職場に迷惑をかけないか?」や「赤ちゃんに良くない影響がでないか?妊娠や出産はできるのか?」など、周りの方々に負担をかけてしまう事へのご心配です。そんな、周囲の方々への配慮をされている皆様にお伝えしたいのが、「お仕事OK、妊娠出産もOK、ご安心ください」という事です。

お仕事に関しては、確かにリウマチと診断されお薬で治療が始まってから数か月間は、まだ痛みや腫れが治まらない状態が続くかもしれません。しかし、徐々にお薬の量が増えてしっかり効いてくるので、数か月後には痛みや腫れが無くなり、今まで通りのお仕事ができるようになる方が多くいらっしゃいます。ぜひ仕事をすぐに辞められるのではなく、しばらく続けて様子を見て頂ければと思います。
それでも、あまりに手足に負担のかかる重労働のお仕事は、リウマチの痛みが治りにくかったりと難しい面があるかもしれません。その場合に大切になるのが、職場の周りの方々のお力添えになります。職場の上司の方にリウマチである事や症状をお伝えしたところ、手足に負担の少ないお仕事内容に変えて頂き、そこでご活躍されている方がいらっしゃいます。また、職場の仲間にリウマチである事をお伝えしたところ、手足の痛みが出ている日には、周りの仲間がサポートしてくれたりされている方もいらっしゃいます。 ぜひ無理はせず、職場の人達のお力もお借りして、なるべくお仕事でもご活躍頂ければと思います。

また、妊娠・出産に関しても、ぜひ前向きに考えて頂ければとおもいます。確かに、リウマチのお薬の中には、赤ちゃんへの影響があり妊娠や授乳中には使えないお薬もあります。しかし、現在ではリウマチの良いお薬が沢山登場し、その中には妊娠中や授乳中も使えるお薬がありますので、どうぞご安心ください。
近々、「ご結婚される」「妊活を始める」などのご予定が決まりましたら、お薬を妊娠中も使えるものに変更していったりしますので、ぜひ主治医の先生にお伝えいただければと思います。これは私事で恐縮ですが、リウマチの痛みが良くなられ、さらに元気な赤ちゃんを出産されて、受診の時に生まれた元気な赤ちゃんにお会いさせて頂いた時など、リウマチ医として少しでもお役に立てて良かったなと大変嬉しく光栄に思う瞬間です。

7,急に痛くなったらどうしたらいいの?

一昔前と比べて、リウマチのお薬はとても良いものが沢山ありますので、リウマチの痛みや腫れがぶり返して再発してしまうという事は、ずいぶん減りました。しかし、それでも、ついついお仕事で手足を使いすぎてしまったり、疲れがたまってしまったりして、リウマチがぶり返してしまう事があります。また、そういった原因が特に思い当たらなくても、自然にリウマチが再発してしまう事もあります。リウマチの勢いには、波があるんですね。 僕らリウマチ医も、一生懸命にリウマチの痛みや腫れをぶり返さないように、診察やお薬を調整させて頂いておりますが、それでも時に痛みが出てきてしまう事があります。申し訳ございません。

ぜひ皆さんには、「急に痛くなった時にどうしたら良いですか?」というのを、リウマチの調子が良い時に、主治医の先生にお伺いしておくと良いかと思います。その上で、急に痛くなってしまった時は「お手持ちの痛み止めを使って、安静にする」というのが基本になります。痛み止めと安静で翌日には痛みが良くなればOKで、数日たっても痛みや腫れが良くならない場合には、ご通院されているクリニックや病院にお電話頂けると良いかと思います。 というのも、リウマチのお薬は増やしてすぐに効果が出てこないものが多いので、まずは効き目の早い痛み止めを使われるのがお勧めです。また、痛みの原因が、実はリウマチ以外の筋肉痛や腱鞘炎などである場合もあり、その場合にはリウマチのお薬を増やしても効果はなく、痛み止めと安静が効果を発揮してくれます。

①すぐに痛みを無くしてくれる「飲む鎮痛剤」

痛み止めといってまず思いつくのが、「ロキソニン」「ボルタレン」など飲み薬の鎮痛剤かと思います。また最近では薬局さんでも市販薬として購入できるようになっており、「頭痛にバファリン」「イブクイック」など頭痛薬としてCMでも皆さんお馴染みかもしれません。 これらの飲む鎮痛剤の特徴は、なんといってもその効き目の早さと、お手軽さにあるかと思います。家に常備しておいたり、旅行先や仕事先にもっていき、リウマチで痛みが出てきた時に使って頂けると便利です。またリウマチ以外の痛みもとってくれますので、頭痛、腰の痛み、歯の痛みなど、体のどこでも痛みを良くしてくれます。僕も頭痛持ちなので、出先で飲めるようにロキソニンを鞄の中に常備しています。 少し注意が必要なのは、腎臓が悪い方や、胃潰瘍などがある方、喘息のある方です。こういった痛み止めを使ってよいかを、事前に主治医の先生にご確認頂けるとより安心です。

~飲む鎮痛剤の仲間たち~

  • ボルタレン、インドメタシン、バファリン
    痛み止めの効果が強い、胃腸・腎臓・喘息への負担には注意しましょう
  • ロキソニン
    胃や腎臓への負担が少な目です
  • フルカム、モービック
    長く効くので1日1回でOKです
  • セレコックス、ハイペン
    胃に優しい新しい痛み止めです
  • ボルタレン座薬
    飲むより効き目が早い座薬タイプになります
  • カロナール
    妊婦さんや、子供も使えます

②痛い場所にピンポイントで効く「湿布(しっぷ)」「塗り薬」

「湿布(しっぷ)」や「塗り薬」も皆さんにとても愛されている、痛み止めのお薬になります。「ロキソニンテープ」「モーラス湿布」「ボルタレンゲル」など、ご愛用されている方も多いかもしれません。また薬局にも多くの市販の湿布があり「サロンパス」「フェイタス」「バンテリン」など、肩こりや腰痛のCMで目にされた方も多いかと思います。
この湿布や塗り薬の特徴は、痛い場所に直接貼ったり塗ったりして治せること、また湿布を切ったり貼ったりと、ご自分で調整がしやすい点かと思います。
これらの湿布や塗り薬には、ロキソニンやボルタレンなど、飲む痛み止めにも使われている鎮痛剤のお薬が入っています。この痛み止め成分が、皮膚から吸収されて、関節や筋肉の痛みを良くしてくれます。
それに加えて、湿布には幹部を冷やしてくれる冷湿布と、温めてくれる温湿布もあります。よく「痛い時は温めるのと、冷やすのと、どっちがいいですか?」とご質問を頂きます。人によっても違うので、「試してみて、痛みが良くなった方がお勧めですよ」という事にはなりますが、「関節が腫れて熱を持っている時は冷湿布、冷えてこわばって痛い時は温湿布」と目安にして頂けるとお役に立てるかと思います。 また、貼りやすい「○○パップ」というタイプの材質と、はがれにくい「○○テープ」というタイプの材質もあります。
塗り薬の方も、塗る広さや、塗った後のべたつき感、手が届かない背中への塗りやすさなどで、チューブに入った軟膏(なんこう)やクリーム、水っぽいローションタイプ、スティックのりのようなゲルタイプ、広い範囲にぬれるスプレータイプなどがあります。
湿布も塗り薬も、沢山の種類がありますので、使いやすさも含めて、ご自分に合うお気に入りが見つかると良いですね。