リウマチが分かる7つのポイント(4)

5,自分でできる事は(食事、運動など)?

「よーし、リウマチの治療も始まったし、自分でも何かできる事はないかな?」
「リウマチって、食事で何か気を付ける事はあるのかな?」
「何かリウマチに効く運動とかあれば、やってみたいな」 などなど。
そんな前向きに治療に取り組まれ、ご自分でもリウマチを良くしていきたいな、と思われている皆様は本当に素晴らしいと思います。そんな皆様からのご質問にお応えできればと思います。

①リウマチの食事は、あまり気にせず「普通」でOK

リウマチは、食事自体が大きな原因である糖尿病などとは違いますので、「××を食べちゃダメです」「○○を沢山食べて下さい」というような厳しいルールはありません。唯一、食事が偏らないように、野菜、果物、魚、お肉、乳製品、穀類など、色々なものをバランス良く、そして何より美味しく召し上がって頂く事が大切かと思います。ただ、これはリウマチに限った話ではなく、皆さんと同じになります。なので、一言でいうと「リウマチの食事はあまり気にせず普通でOK」になります。
もし、リウマチ以外に、糖尿病や高コレステロールなど内科のご病気もお持ちの方は、そちらの内科の病気を考えて食事に気を付けて頂ければと思います。例えば、糖尿病をお持ちの方ではパンやお米などの炭水化物を控えたり、コレステロールの高い方では脂肪分の多いお肉やバターを控えて頂いたりといった感じです。このあたりは、ご診察して頂いている内科の先生のアドバイスを大切にされると良いかと思います。

その上で、「バランスの良い食事をとれているか、一度確認してみてくださいね」という視点で、リウマチの方向けに、食事の確認ポイントをあげさせて頂きます。

~リウマチの方むけ、3つの食事確認ポイント~

ポイント1「お魚(たんぱく質)をとれていますか?」

リウマチになり手足が痛く、買い物などの外出がおっくうになったり、お料理するのが大変で、ついつい簡単に食べられる、パンやめん類ばかりの偏った食事になられてしまう方がいらっしゃいます。そして調理にお手間のかかる、お肉や魚、野菜などはついつい少なくなってしまいがちかもしれません。
しかし、手足の痛みで運動量が減る事や、リウマチ自体の炎症でエネルギーが消耗される事から、リウマチの方は筋肉の量が減りやすい傾向にあります。ですので、肉、魚、卵、大豆などのたんぱく質を摂るのを忘れないようにして頂ければと思います。特に、魚のたんぱく質は体の炎症を抑えてくれる効果が言われており、できれば肉よりも魚を召し上がって頂くとより良いかと思います。
料理のお手間が大変な方には、サバ缶などお魚の缶詰を使って頂いたり、最近ではコンビニでレンジで温めるだけの焼き魚もありますので、ご活用くださいね。

ポイント2「パン・お米・めん類(炭水化物)はとり過ぎてないでしょうか?」

また逆に、ついつい用意の手間がかからず、食べる機会が増えてしまいがちなのが、パンやお米や麺類になるかと思います。これらはどれも炭水化物、つまり糖分になります。なので、もともと糖尿病のある方はもちろん、リウマチの痛みで運動量が減っている方や、ステロイドのお薬を使われている方ですと、知らず知らずのうちに血糖が上がってしまったり、体重が増えてしまったりという事もあるので注意が必要です。特に、体重が増えるとその重さで膝(ひざ)や足が痛くなってリウマチも悪くなってしまうので、体重増加には気をつけてくださいね。月1回くらい、体重計で体重チェックをして頂くのが、お勧めですよ。

ポイント3「小魚(カルシウム)とキノコ(ビタミンD)はとれていますか?」

リウマチの方、特に閉経後の女性の方は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を起こしやすくなります。骨粗鬆症というのは、骨の密度が下がって弱くなり、ちょっと尻もちをついたり、ぶつけただけで、骨折を起こしてしまいやすくなる病気です。
そのため、骨を丈夫にする為にも、骨の材料であるカルシウムを忘れずにとりましょう。カルシウムは牛乳や乳製品はもちろんですが、しらすやジャコなどの小魚にも含まれていますので、牛乳が苦手な方にもお勧めです。また、ビタミンDと一緒にとるとカルシウムの吸収が良くなるのでお勧めです。ビタミンDは、干しシイタケ、きくらげ、キノコ類、鮭、青魚 などに多く含まれています。野菜炒めなどにすると、食べやすくてお勧めですね。

②サプリや健康食品は無しで大丈夫

世の中には色々なサプリメントや健康食品があります。最近ではインターネットが普及したため、本当に多くのサプリメントや健康食品の宣伝を目にする様になりました。中には「リウマチ専用のサプリ」とか、「リウマチが治った」などをうたわれた商品もあります。
これらが本当に効果があるのかどうかは、なかなか結論が難しいかと思います。
ただ1つ言えるのは、リウマチのお薬のように科学的にリウマチに効果があると認められて、みんなが認めるようなサプリや健康食品は無いという事です。
ですので、まずはリウマチのお薬をしっかり使って頂く事が一番大切になります。リウマチのお薬を使わずに、これらのサプリや健康食品だけでリウマチを良くしようとするのは、お勧めできません。

「なるべくお薬を使わずに、リウマチを良くしたいな」というお気持ち、良く分かります。ただ一昔前と違って、今はリウマチのお薬がとても良くなり、ほとんどのリウマチの方がお薬で良くなりますので、どうぞご安心頂ければと思います。
その上で、もしリウマチのお薬にプラスして試されたいサプリや健康食品がありましたら、お使いになる前に主治医の先生に確認して頂く事が大切です。それは、体を良くしたいと思われて使われたサプリメントや健康食品が、逆に体に悪い働きをしてしまう事があるからです。
例えば、もともとカルシウムが足りていた方が、カルシウムのサプリを飲まれて、体の中のカルシウム濃度が上がり過ぎて、吐き気や体調を崩されてしまう事があります。また、ビタミンの一種である葉酸(ようさん)を抑えてリウマチを良くしていくメトトレキサートで治療をされている方が、体に良いからと葉酸のサプリも飲まれてしまうと、メトトレキサートの効果が弱くなってリウマチが悪化してしまう事もあります。
よかれと思ったことが、逆効果になってしまう事もあるので、どうそお気をつけ頂ければ幸いです。

③運動は無理なく少しずつ

数年前の話しになりますが、1週間のうちに何人ものリウマチ患者さんが膝(ひざ)や足首が腫れて痛くなり、来院された事がありました。もともと皆さんリウマチのお薬が良く効いていて、何年もリウマチが落ち着いておられた方々でしたので、どうしたのだろう?と疑問に思いお伺いしてみました。すると、どうやら皆さん、同じテレビの健康番組で「スクワットが膝に良いですよ」と特集されていたのを見られ、スクワットを頑張り過ぎてしまったようです。その結果、長年安定していたリウマチが再発してしまい、結果としてお薬を一時的でも増やしたり、変更したりといった事が必要となってしまいました。

確かに、リウマチだからとあまりに安静にしすぎて、手足を動かさないでいると、筋肉も減りますし、使わなくなった関節の動きが悪くなってしまい、関節の変形に繋がる事もあります。ですので、体を動かす運動は大切になります。ただ、リウマチの運動の目的は、筋肉を増やす筋トレとは違います。「関節の動く範囲を維持する事」と「筋肉の量を維持する事」がリウマチの運動の目的になります。

ですので、ゼーゼーと息が切れるような激しい運動や、痛みを伴うような筋トレではなく、「散歩」や「水中ウォーキング」、「ストレッチ」といった、全身を使うゆっくりした痛みの出ない運動がお勧めになります。また「リウマチ体操」という、全身の関節を動かせるリウマチの方向けの体操もありますので、ぜひご参考にしてみてください。

また、リウマチの痛みや腫れは、日によって変わってきます。リウマチの痛みが出ている日、腫れが出ている日などは、運動をせずに安静にするようにしましょう。運動は、リウマチの痛みや腫れがない、調子の良い日に行うことが大切です。また、もし昨日の運動のせいで翌日に痛みとして残るようでしたら、ちょっと運動をし過ぎというサインになります。「そっか、昨日の運動はやり過ぎなのだな」と気づかれ、次の運動の量を調整する目安にして頂ければと思います。

④関節に優しい生活スタイル

体を動かさないでいると、手足の関節が硬くなったり、筋肉の量が減って、ますます体を動かすのが大変になってしまいます。ですので、リウマチの痛みや腫れがある時は安静にし、調子が良い時はお掃除やお料理などの家事を行ったり、通勤やお仕事をされたりなど、痛みの出ない範囲で今まで通りの生活をして頂く事が大切になります。「無理せず、楽をし過ぎず」と言うのが生活のポイントになります。

その上で、「リウマチに優しい生活スタイル」をご紹介させて頂きます。じつは、知らないうちに、日常生活の中で関節に負担の大きい動きをしていたり、ご自分の動作のクセが関節の負担になっていたりします。過度の負担が繰り返し関節にかかると、リウマチの痛みや腫れだけでなく、変形を起こす原因にもなってしまいますので、そうならないように一緒にポイントを確認していきましょう。

1)リウマチに優しいパソコン作業3つのポイント

パソコンを使ったデスクワークの方がどんどん増えていらっしゃいます。パソコン作業をする中で、僕自身もそうなのですが、ついつい首が前に出て背中が丸まってしまったり、足を組んだり、ほお杖をついたり、といったクセが出てしまう方もいらっしゃるかと思います。実はこういったクセが、手足や首、腰の関節に余計な負担をかけてしまいます。ポイントは3つ、

ポイント1:背筋を伸ばした良い姿勢でお仕事をしましょう
ついつい下を向いて作業しがちですが、背中が丸まると首や腰に負担がかかってしまいます。ぜひ背筋を伸ばした良い姿勢で、気持ちも明るくお仕事をして頂けると幸いです。

ポイント2:目線とパソコン画面が水平になるように、パソコンと椅子の高さを調節しましょう
パソコンの画面が低いと、自然と首が前に出て猫背になってしまうので、パソコンの下に本などを置いて少し高くしたりと、ちょっとした工夫されると良いかと思います

ポイント3:同じ姿勢を長く続けないように、休憩を挟みましょう
関節に優しいのはもちろん、眼の疲労を防ぐ面でも、1時間お仕事をしたら10分ほどの休憩をするようにしましょう。

2)買い物やフライパンなど、何かを持つとき3つのポイント

ついつい、マグカップやフライパンなどを片手で持ってしまい、翌日に手首や指が腫れて痛くなってしまったご経験はないでしょうか?また、重い買い物袋を持たれてから、手指のリウマチがぶり返してしまったというご相談もよく伺います。何かを持つ時も、無意識に頑張り過ぎて関節に負担をかけてしまっている事があるので、注意が必要です。

ポイント1:片手ではなく「両手」で持ちましょう
コップやフライパン、お皿などを持つ時は、

両手で持つようにしましょう。ちょっとした心がけですが、両手で持つと、手首や指の関節への負担がぐっと減ります。また、周りの方にも、ちょっと丁寧な動作の印象を持たれて良いかもしれませんね。

ポイント2:軽い物は「肘(ひじ)」にかけ、重い物は「カート」や「リュック」を使いましょう
手首や指などの小さな関節よりも、肘(ひじ)や肩(かた)などの大きな関節の方が頑丈になります。ですので、荷物を持つ時は、なるべく手や指のような小さな関節ではなく、肘や肩などの大きな関節を使う事がお勧めです。
例えば、買い物をされるとき、軽い買い物であれば手で持つのではなく肘(ひじ)にかける。重い荷物の場合には、カートを使ったり、両肩にかけられるリュックサックのような入れ物がお勧めになります。

ポイント3:手首をひねる動作は避けましょう
診察室でもよく伺うのが、手首をひねるような動作をされてから、手首が腫れて痛くなってしまったという声です。昔から、雑巾やタオルを絞るといった手首をひねる動作は、関節の変形を進めてしまうとも言われていますので、なるべく避けて頂ければと思います。絞る時はタオルなどを水道の蛇口にかけて絞るなどの方法もありますが、今はウェットティッシュやペーパータオルなどもありますので、これらを活用して、雑巾やタオルを絞らなくてもいいようにされると良いのかなと思います。

③リウマチに優しいお住まいの3つのポイント

畳の香りがする和式のお住まい、僕も個人的に趣があって凄く好きなのですが、リウマチの方向けの関節に優しいお住まいと言う点で考えると、和式ではなく洋式のお住まいがお勧めになります。ポイントは3つ、

ポイント1:布団(ふとん)ではなく、ベッドで寝ましょう
布団はどうしてもベットに比べると、立つ時に膝(ひざ)や足腰の関節への負担が大きくなります。また布団の上げ下ろしも、手や指の関節に負担となります。できれば、関節への負担が少ないベッドをご利用いただくのがお勧めです。さらに、関節を押し付けないように布団はできるだけ軽いものが良く、軽くて暖かい羽毛布団などがお勧めです。また、枕は首が前かがみにならないように、少し低めのものをご検討頂けると良いかと思います。

ポイント2:畳(たたみ)よりも、イスやソファーに座りましょう

畳はイスやソファーに比べて、座ったり立ったりする際に、足腰の関節に大きな負担をかけてしまいます。また正座やあぐらも膝(ひざ)に大きな負担になってしまいますので、なるべく椅子やソファーに座るようにしましょう。また椅子やソファーは、座って足を床に着けたときに、膝(ひざ)が90度程度になる高さがお勧めです。

ポイント3:エアコンで、快適な温度調整をしましょう

体が冷えると、手足の関節の痛みやこわばりが強くなりやすくなります。ですので、寒い冬は体を冷やさないように、エアコンでしっかりお部屋を暖かくする事が大切です。また、暑い夏は、熱中症にならないように、エアコンを使う事が大切です。その時でも、冷たい風が直接に手や足にあたると、関節が冷えて痛くなってしまう事があります。特に寝ている時に、冷たい風が直接、手や足の関節に当たらないよう風向きを調整されるのがお勧めです。