リウマチが分かる7つのポイント(2)

3,リウマチはどんな検査をするの?

「この長引く指や手、足の痛みはリウマチかも?」と思われた皆さんがから良くいただくご質問が、
「リウマチの検査って大変なんですか?」
「リウマチかもって思ったら、どこに相談したらいいの?」
「レントゲンの検査を受けたのですが、はっきり結果がでませんでした」
などになります。
実は、ここ数年でリウマチの検査はとっても進歩しました。特に「関節エコー検査」という超音波検査が登場してから、今までのレントゲンや血液検査だけは見つける事ができなかったリウマチになりたての方を、しっかり早期に診断できるようになりました。また、患者さんにとって負担の大きかったMRI検査も、関節エコー検査が登場してくれたおかげで、ほとんど行わずにリウマチの診断ができるようになりました。

①新しい「関節エコー検査」で、早期のリウマチも見つけられるようになりました

一昔前までは、リウマチの検査というと、「レントゲン」と「血液検査」、「触診(しょくしん)」しかなく、正直なかなかリウマチと診断するのが難しい状況でした。 「レントゲン」は骨を見るのが得意な検査で、リウマチの進行具合を見るのに便利です。しかし「リウマチかも?」と心配されて病院を受診されるリウマチになりたての方は、骨にまだ異常が出ていません。なので、レントゲン検査をうけられても正常となってしまう事が多く、リウマチの早期診断にはレントゲン検査は少し力不足となります。 「血液検査」は「リウマチの体質をお持ちかどうか」などを知る事ができます。しかし、リウマチの体質がある事は分かっても、実際にリウマチを発症されているのかどうかまでは分かりません。 「触診(しょくしん)」とよばれる医師が痛みのある手指を触って行う診察も、手指の浮腫みや皮下脂肪など患者さんによって個人差が大きいですので、なかなか精度の面では難しい所がありました。 そんな中、一昔前にも、MRIというレントゲンでは分からない早期のリウマチを見つける検査機器はありました。しかし、MRIは非常の高価で大型の機械で、専用の検査室をもつ大きな病院にしかなく、検査の予約が一杯でずいぶん先になってしまう事が多くありました。また、造影剤というお薬を注射したり、検査中の大きな音や、検査に時間がかかるなど、患者さんのご負担を考えると、なかなか皆さんに検査をお願いする事もできず、また痛い時に何度もできる検査ではありませんでした。 そんな状況なので、私自身も「リウマチと診断までは出来ないけど、違うともいえないな」という診断に迷う多くの患者さんにお会いし、「お力になれず本当に申し訳ないです」という気持ちを抱えながら診療をしておりました。そんな中で登場したのが、「関節エコー検査」になります。

<ここが凄いぞ!関節エコーの3つのポイント>

ポイント1 レントゲンでは分からないリウマチも早期発見
みなさんも健康診断やテレビ番組などでレントゲン写真を見られた事があるかもしれません。レントゲン写真は骨をよく見る事ができます。なので、ケガをしたときに骨が骨折していないかを見るのに、レントゲンは大活躍をします。 しかし、リウマチの場合にはいきなり骨に異常がでるわけではありません。まず関節が腫れて痛くなって、そのまま何年もほっておくと「びらん」といって骨に穴が空いたり、「変形」といって手指が曲がったりしてしまいます。ただ、このようなレントゲンでわかるような骨に異常がでているリウマチの方は、残念ながら、すでにある程度進行してしまったリウマチと言う事になります。レントゲン検査では、リウマチを早期に診断する事ができません。 そこで登場したのが、「関節エコー検査」になります。関節エコー検査は、レントゲンでは写らない関節の腫れや炎症を見つける事ができるので、リウマチを早期に発見する事ができます。実際に、リウマチになりたての方の多くは、レントゲンでは正常のままです。しかし、そんなレントゲンでは正常の方でも、関節エコー検査をすると、しっかり関節に炎症がおきていて、リウマチと診断される方が多くいらっしゃいます。 ここで大切なのは、早くにリウマチと診断できれば、早く治療を始めて痛みが無くなり、手指の変形もおきなくなるという事です。ですので、「レントゲンで骨は大丈夫って言われたけど、やっぱり手首や指が腫れて痛いんだよな」という皆さん、ぜひ一度は関節エコー検査をご検討くださいね。
関節エコー検査では、リウマチの炎症が赤く炎のように見えます。 これはレントゲンでは分かりません
レントゲンでは正常ですが、関節エコー検査でリウマチの赤い炎症をみつけリウマチを早期に診断できました
ポイント2 診察室ですぐに検査ができる

関節エコーと同じように、関節の中に炎症が起きていないかを見る事ができる検査にMRIがあります。しかし、MRIは非常に高価な大きな機械になりますので、大きな病院での後日の予約となり、その日に検査する事は難しいです。そのため、検査予約の日になる前に痛みが悪化したり、逆に痛い場所が変わってしまったりという事がよくありました。

一方、関節エコーはとてもコンパクトな機械で、クリニックの診察室に置かれています。
そして、診察中に「今日は、人差し指が腫れて痛いんです」と教えて頂ければ、「分かりました、ちょっと関節エコーで見てみましょうね」と、診察室内でそのまま検査する事が出来ます。またその関節がうつっている画面を皆さんと一緒に見ながら検査ができますので、「ここの赤い部分が、リウマチの炎症ですね」など、より皆さんとお話しをしながら、分かりやすくご説明ができます。 そして、関節エコー検査の結果で関節の中に炎症がおきていれば「リウマチの可能性が高いので、詳しく血液検査をしましょう」となったり、「リウマチが残っているので、お薬をパワーアップしましょう」と、リウマチの診断や適切な治療に繋がります。
またもし関節の中に炎症が起きていなければ、「リウマチの可能性は低そうですよ」、「リウマチの痛みではないのでお薬は増やさなくても大丈夫ですよ」と、リウマチが原因ではない事もお伝えする事ができます。そうする事で、不必要にリウマチのお薬を使ったり増やしたりする事も避けられますので、安心ですね。

ポイント3 妊婦さんもOK、体への負担が全くない検査です
みなさんは、エコー検査というと何をお考えになるでしょうか?健康診断の時に、ゼリーを塗ってお腹の中を調べる腹部エコー検査(=腹部超音波)や、妊婦検診でお腹の中にいる赤ちゃんをみる胎児エコー検査などを思いつかれた方がいらっしゃるかもしれません。 関節エコーも、これらの健康診断や妊婦検診で行われるエコー検査と全く同じです。同じエコーを、痛みのある手指や足に当てて、関節の中を見るのが関節エコー検査になります。 検査方法も全く同じで、手指や足にゼリーを塗って、エコーの機械をポンとその上にのせるだけになります。 特に痛みもありませんし、お腹を見るわけではないので健康診断と違って、食事をされてきても全然OKです。 また、レントゲン検査は放射線、MRI検査も造影剤というお薬を注射したりと、少し体に負担がかかる検査になりますが、エコー検査は妊婦さんに行われるくらいですので、まったく体への負担がありません。安心してお気軽に検査ができますよ。
②リウマチかもと思ったら、「関節エコー検査」ができるクリニックや病院に相談しましょう!
もし皆さんが「リウマチかも?」と思われたら、正直なところ「関節エコー検査」ができるクリニックや病院さんを受診されるのが、一番安心かと思われます。 ただ、関節エコー検査は新しい検査で、どのクリニックや病院でもできる検査ではありません。ですので、受診される前に、関節エコー検査ができるかをクリニックや病院のホームページ見てご確認して頂くと良いかと思います。また、実際にお電話をされて「リウマチが心配なのですが、関節エコー検査をされていますか?」とお聞きになるのも、おすすめかと思います。 リウマチは数日でおさまる風邪などとは違い、長くお付き合いする病気になりますので、ぜひ必要な時に関節エコー検査が受けられるリウマチ専門のクリニックや病院にご通院頂き、安心できる診療を受けられる事をお勧めいたします。
③新しいリウマチの血液検査って?
関節エコー検査と並んで、リウマチを診断するのに役立つのが、新しいリウマチの血液検査になります。 リウマチの血液検査で特に大切なものは、「CCP抗体」「リウマチ因子」「CRP」の3つになります。 この3つは検査の目的から大きく2つのグループ、「リウマチの体質をお持ちかどうかがわかる検査」と「リウマチを発症されているかがわかる検査」に分けられます。

リウマチの体質をお持ちかどうかがわかる検査→「CCP抗体」と「リウマチ因子」

「CCP抗体」と「リウマチ因子」が、このリウマチの体質があるかを見る検査になります。この2つはイメージとしては、「リウマチを引き起こす、悪い免疫物質の兄弟」といった感じです。
なぜ兄弟かというと、「リウマチ因子」は昔からある検査なのでお兄さん、「CCP抗体」は新しく発見された検査なので弟になります。

リウマチ因子(リウマチ反応)

このお兄さんの「リウマチ因子」の方は、昔から健康診断や人間ドックでも使われておりますので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。リウマチ反応とも呼ばれ、広く使われております。
このリウマチ因子が高いと、健康診断や人間ドックの結果で「リウマチの可能性があるので、リウマチ専門医に相談してくださいね」という判定を頂く事になります。
そんな認知度抜群のリウマチ因子なのですが、実は弟のCCP抗体に比べると出来がちょっとイマイチになります。
リウマチの方のうち70-80%の方で陽性になるのは役に立つのですが、リウマチになりたての早期リウマチの方でみると50%の方しか陽性になりません。逆にいうと、早期リウマチの半分の方は、リウマチ因子が正常という事になります。なので、リウマチ因子が正常だからといって「リウマチじゃないですよ」とは言い切れません。

また、リウマチ以外の病気でもリウマチ因子は陽性になってしまう事があります。例えば、リウマチ以外の膠原病(こうげんびょう)と呼ばれる免疫異常の病気や、結核(けっかく)や肝硬変(かんこうへん)というリウマチとは関係ない病気でも、リウマチ因子が陽性になる事があります。
さらに、健康な方でも陽性になることがあります。特に、年をとるにつれて、リウマチ因子が陽性になる方が増えるので、60歳以上の方だと10-20%の方でリウマチ因子が陽性になります。なので、よく健康診断や人間ドックでリウマチ因子が陽性と分かった方が、「私はリウマチなんだ、どうしよう」と大変ご心配され、ご受診頂く事があります。しかしリウマチ因子は正常でも陽性になる事がありますので、リウマチを疑うよう「手」「指」「足」の痛みがなければ、ほとんどの方が問題ありません。もし手や指や足に気になる痛みがある場合、そこで役立つのも「関節エコー検査」になります。実際にリウマチが関節の中で起きているのかを、気になる手指にエコーをポンっとのせる事で、しっかりチェックできます。

抗CCP抗体

認知度抜群だけど出来がちょっと残念なリウマチ因子の兄貴に比べて、知名度は低いけど出来が良いのが弟のCCP抗体になります。これはリウマチの研究が進む中で、新しく発見されたリウマチの原因となる物質です。
このCCP抗体の特徴は、リウマチ因子が苦手で診断が難しい早期のリウマチでも、75%の方でCCP抗体は陽性になる事です。そのため、関節エコー検査と併せて、リウマチになりたての方の早期診断に非常に大きく役立っております。さらに、リウマチ以外の病気や健康な方では、きちんと陰性になってくれることも、他の病気との区別にとても役立ちます。ですのでCCP抗体が陽性であった場合には、現在リウマチである可能性や、今後リウマチになる可能性がグッと高まります。
このCCP抗体は、「タバコ」や「歯周病」があると、体の中で作られやすいと言われております。リウマチを予防する為にも、またリウマチの治療が上手く行くためにも、「禁煙」と「歯周病ケア」が大切なるので、ぜひご協力頂けると幸いです。
さて、全体的には弟のCCP抗体の方が優秀ではありますが、それでもやはり完璧な検査ではありません。弟のCCP抗体は正常だったけど、兄貴のリウマチ因子だけが陽性のリウマチの方も実際にはいらっしゃいます。なので、兄弟が力を合わせるように、リウマチ因子とCCP抗体の2つを検査する事が大切になります。

リウマチを発症されているかが分かる「CRP検査」

最近では、新型コロナウイルスのPCR検査が広く認知されていますので、スペルが似ている「CRP検査」が混同されてしまいがちです。コロナの「PCR検査」ではなく、リウマチは「CRP検査」(シーアールピィー)になります。これは一言でいうと、「体のどこかで炎症が起きているかを調べる検査」になります。
リウマチの場合には、手指や足などの関節の中で、免疫の細胞が暴れて炎症を起こしているので、このCRPが高くなります。

このCRP検査は、リウマチと他の病気との区別に役立ちます。
例えば、「使い過ぎの手首の腱鞘炎(けんしょうえん)」、「加齢性の指の痛み」、「五十肩(ごじゅうかた)」といった整形外科さんがご専門の病気も、リウマチのような症状が出てきます。そんな時CRP検査をすると、これらの整形外科さんの病気では、リウマチのような強い炎症は起きていませんので、CRPは正常のままですので区別がつきます。

さらにCRP検査は、リウマチの強さや、治療によってどれだけリウマチ治まったかを見る事にも役立ちます。
最初からCRPが凄く高いリウマチの方ですと、リウマチの勢いが強いので、それに見合ったリウマチのお薬を選んでいこうという事になります。またリウマチの治療を始めた後に、CRPがキチンと下がって正常になっているかが、お薬でリウマチがしっかり治まっているかを教えてくれます。
しかもこのCRPは、クリニックの中で検査ができ、10分程で結果が分かるので、とっても便利な検査になります。

CRP検査の注意するところ

そんな便利で役立つCRP検査ですが、注意するところが2つあります。
注意1:CRPが正常だからといってリウマチの炎症が無いとは言い切れない
少し考えてみると、同じ関節でも、膝(ひざ)や肩(かた)のような大きな関節もあれば、手の指や足の指など小さな関節もあります。 この膝や肩のような大きな関節にリウマチがおきると、その中でおきる炎症も大きな範囲になりますので、血液検査をするとCRPが高くなります。 しかし、「手の指」や「足の指」のような小さな関節で、しかも1-2か所と少ない箇所でリウマチが起きている場合には、炎症の起きている範囲が少ないため、血液検査をしてもCRPは正常という事が、実はとても良くあります。そんな時、「リウマチが本当に起きているのか?」「リウマチの治療を始めるべきなのか?」と、僕らリウマチ専門医でも判断に迷う事があります。そんな時にも役立つのが、「関節エコー検査」になります。たとえ血液検査でCRPは正常でも、関節エコー検査で痛みのある「手の指」「足の指」をみると、関節の中にしっかり炎症がおきており、それを見てリウマチという診断になる事もよくあります。 また、すでにリウマチの治療をされている方で、「CRPは正常になったけど、まだ痛みが残っているんです」という場合にも、「リウマチが残っているのか?」「リウマチのお薬をパワーアップすべきなのか?」と、非常に迷う事があります。 この場合にも「関節エコー検査」を行い、痛い関節にリウマチの炎症が残っていればリウマチのお薬をパワーアップし、そうでなければリウマチの痛みでは無いですよとお伝えし、痛み止めなどで対応する事が出来ます。
注意2:リウマチだけではなく、他の膠原病、風邪やインフルエンザでもCRPは高くなる

もう一つCRPに関して注意が必要なのは、リウマチ以外の原因でも体の中で炎症がおきていればCRPは陽性となるという事です。リウマチ以外の膠原病(こうげんびょう)とよばれる免疫の病気でも、体の中に炎症がおきるとCRPは高くなります。風邪や胃腸炎などの感染症になって、特に熱が出ているような時にもCRPは上がります。また最近では、新型コロナウイルスのワクチンを打たれて熱が出た数日後に採血をされた方でも、CRPが上がっておられました。
ですので、もし手足の痛みがなく、リウマチは絶好調なのにCRPが高い場合には、リウマチ以外の原因を考える必要があります。特に、リウマチのお薬を使われている方の場合には、感染症が起きていないかを医師と一緒に確認する事が大切になります。