関節リウマチとは

関節リウマチとは

「関節リウマチって何なんですか?」「膠原病っていうのとは違うんですか?」

など、よくお聞きします。関節リウマチは膠原病という広いくくりの中の1つになります。人間の体には外から侵入してくる細菌・ウイルスを退治するために免疫細胞があります。
その免疫細胞が間違って自分の体を攻撃してしまう病気をまとめて「膠原病」といいます。
どんな種類の免疫細胞が、体のどこを攻撃してしまうかによって症状が変わり、病気の名前も変わってきます。例えば涙腺や唾液腺を免疫細胞が攻撃してしまうと、目や口が乾いてしまうシェーグレン症候群という病気を起こしてきます、皮膚や筋肉を免疫細胞が攻撃すると皮膚にカサカサした発疹や筋力低下が起きる皮膚筋炎という病気が出てきます。膠原病の中にも、いろいろな種類の病気があるんですね。

その中で、関節リウマチは免疫細胞が自分の関節を攻撃してしまう病気です。
「朝のこわばり」、「手指の痛み・腫れ」が有名ですが、その他にも「肘」「膝」「足」「肩」など多くの関節に痛み・腫れが出てきます。またその状態を我慢してしまうと、関節の骨や腱が壊れてしまい、関節の変形を起こしてしまいます。

○関節リウマチの原因は?遺伝するの?
次によく質問を頂くのが、「リウマチの原因は何なんですか?」「リウマチが遺伝するのかが心配です」という点です。最近の研究で、「タバコ」「歯周病」が原因でCCP抗体という悪い免疫物質ができて、このCCP抗体がリウマチを引き起こすことが分かってきました。またこの「タバコ」「歯周病」はリウマチの発症の原因になるだけではなく、お薬の効き目も悪くしてリウマチの治療を邪魔をしてきます。「禁煙」「歯周病ケア」がリウマチの予防・治療に大切なんですね。
またリウマチに関係する遺伝子も見つかってきています。ただ一般女性でリウマチを発症される方を200人に1人とすると、ご家族にリウマチの方がいらっしゃる場合は100人に1人ぐらいです。遺伝する可能性はほんの少しと考えてよいかと思います。おそらくリウマチを起こしやすい遺伝子をもって生まれた方が「タバコ」「歯周病」などの影響を受けるとリウマチをより起こしやすいのかと思われます。
また研究で分かっているわけではありませんが、実際の診療をしていると「ケガをした後」「妊娠・出産の後」「風邪などウイルス感染の後」など外からの刺激や免疫・ホルモンバランスが変わったときにリウマチを発症される方がいらっしゃいます。おそらくこれらもリウマチ発症に影響してくるのかなと思います。
○最新のリウマチ検査・治療
さて、そんな関節リウマチですが、ここ10年で診断と治療が目覚ましく進歩したのをご存知でしょうか?今まで難病のイメージの強かった関節リウマチですが、リウマチになっても仕事や家事をそのまま続けることが出来たり、お子さんを妊娠・出産されたり、元気に活躍されているリウマチの方が増えてきました。
リウマチの診断・治療が格段に良くしてくれたのが、「関節エコー検査」と「生物学的製剤」の登場になります。
○「関節エコー検査」~レントゲンで分からない早期リウマチも見つけます~
リウマチの診断は「関節エコー」で大きく変わりました。
昔はレントゲンでリウマチの診断をしておりましたが、実はレントゲンでは骨しか見えないって事を知っていましたか?
リウマチが最初に起きる肝心の関節の中は、残念ながらレントゲンでは写らないのです。そのためレントゲンでは早期のリウマチは診断がつかず、リウマチが進行して骨が壊れてから初めて診断となります。
でも骨が壊れる前に早くリウマチを見つけて治療したいですよね?そこで活躍するのが「関節エコー」です、エコーを関節の上にポンっとあてるだけで、関節の中に腫れ・炎症があるかが分かり、骨が壊れる前の早期にリウマチの診断ができます。
また血液検査で異常の出ない診断の難しいリウマチが全体の約1割はあるって事を聞いたことありますか?このなかなか診断のつかなかった難しいリウマチも関節エコー検査ではっきり診断できるようになりました。
また関節の痛みがリウマチで起きているのか、それとも周りの軟骨がすり減ったり、筋肉がこわばって痛んでいるのかも関節エコー検査で分かります。リウマチが原因で痛みがあればリウマチのお薬を少し増やす必要がありますが、そうでない時はリウマチのお薬を増やす必要はありませんよね?リウマチが原因ではなく軟骨が減ったり、筋肉のこわばりで痛んでいることが関節エコー検査で分かれば、お薬よりむしろ湿布や塗り薬、ストレッチや整体などと治療が変わってきます。

○「生物学的製剤の登場」~関節リウマチの特効薬~
またリウマチの治療も大きく進歩しました。
以前は有効な治療薬がなく、「痛み止め」や「ステロイドホルモン剤」で痛みを和らげることしかできず、多くの患者さんが痛みを完全に良くできないばかりか、リウマチの進行が止められずに手指が曲がり、肘・膝が脱臼したりして整形外科で手術をされたり、残念ながら寝たきりの状態になってしまっていました。
しかしここ10年で「生物学的製剤」という言わば「リウマチの特効薬」ができたことで、リウマチの痛みをとるだけでなく、関節で悪さしている免疫細胞を落ち着かせて骨の破壊や関節変形を起こさない治療ができるようになりました。生物学的製剤の中には、妊娠・授乳中も使用できる薬もあり、今まで妊娠中はステロイドホルモン剤が中心であった治療も大きく変わっています。

実は私の大好きだった祖父も関節リウマチを若い頃から患っており、「痛み止め」と「ステロイド」のみで長年治療をしていました。気候の悪い日には痛みが強くなり布団で横になって痛みを我慢し、年を追うごとに手指・足指の変形も進行してしまいました。私が医師になり、リウマチを専門としたのも大好きな祖父の関節リウマチを良くしてあげたいという思いからでした。リウマチは昔のように早期に診断ができず有効な治療薬がなく、痛みに耐えて寝たきりになってしまう病気では決してありません。あまり心配されずに、いつでもご相談くださいね。