リウマチ・膠原病の血液検査(診断編)

リウマチ・膠原病の血液検査
(診断編)

「リウマチ・膠原病の血液検査は種類が多くて良く分からないよ」こんな声を良くお聞きします。
確かに、普段の健康診断などでは目にしないような特殊な血液検査が並んでいて分かりにくいですよね。
そんな皆さんの疑問に少しでもお答えできればと思います。

リウマチの診断に役立つ血液検査

CCP抗体

聞きなれない検査かと思われますが、リウマチを診断するのにとっても役立つ新しい血液検査です。
リウマチの体質があると基準値よりも高くなります。人間ドックの項目にあるRF(リウマチ反応)もリウマチの体質を診る検査ですが、それよりも性能が良い検査になります。
リウマチ以外の病気ではあまり陽性にはならないので、CCP抗体が高く、関節の腫れがあればかなり関節リウマチの可能性が高くなります。
CCP抗体はリウマチの体質があることを教えてくれる検査ですので、関節の腫れがなければCCP抗体陽性でもその時点ではリウマチは発症していません。
ただこのCCP抗体があると将来的にリウマチを発症する可能性が高いので、手や指の腫れ・痛みがでたら病院を受診し、関節エコー検査でリウマチが出てきて発症していないかをチェックしましょう。

禁煙 また、このリウマチの原因になるCCP抗体ができる原因が最近分かってきています。現在、タバコ、歯周病の2つがCCP抗体を作る原因になることが分かっています。CCP抗体を作らせないでリウマチを予防するには禁煙と歯周病ケアが大切になります。

RF(リウマチ因子)

昔からリウマチの診断に使われてきた検査で、人間ドックの項目に入っていたりするのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。
これもリウマチの体質があると基準値より高くなります。ただCCP抗体と違って、リウマチ以外の膠原病や肝臓の病気、さらには加齢でも陽性になってしまう事があるので、結果が陽性だからすぐにリウマチというわけではありません。健康な人でも5%はリウマチ因子が陽性、さらに健康なお年寄りだと20%の方が陽性になってしまいます。

ポイントは3つ

  1. リウマチを発症しているかを関節エコーで検査すること
  2. リウマチ因子が陽性かどうかだけではなく、その数値がどの程度高いのか
  3. リウマチ以外の膠原病の可能性は?
になります。
このリウマチ因子もCCP抗体と同じようにリウマチの体質があるかを見る検査なので、リウマチの体質があってもリウマチを発症していない場合もあります。
気になる手指の症状があれば、関節エコ―検査をして関節にリウマチが出ているかをチェックすることが大切です。またリウマチ因子が陽性でも少し高いだけの場合は、ほとんど正常で問題ない事が多いです。リウマチ因子が20-30はほとんどリウマチの心配はなく、100前後になるとリウマチの可能性が高くなる印象です。そして名前はリウマチ因子ですが、シェーグレン症候群をはじめとした他の膠原病で陽性になることも多く、リウマチ以外の膠原病の症状の確認や検査をすることも大切です。
もし健康診断でリウマチ因子がひっかかりましたら、いつでもご相談くださいね。

CRP

体の中で炎症が起きると作られるたんぱく質になります。
一言でいうと、リウマチや膠原病などで体の中で何か悪いことが起きていると高くなる検査で、リウマチ・膠原病の診断・治療にもとっても役立ちます。
例えば皆さんは肩や腰が痛い時にどんな原因を考えるでしょうか?
「五十肩」「ぎっくり腰」「加齢」など思いつく方が多いかと思いますが、これらのよくある整形外科の病気では実はCRPは正常のままです。
CRPが高い場合は整形外科の病気ではなく、リウマチや膠原病の可能性が高くなり検査が必要になります。
CRPはリウマチ・膠原病と整形外科の病気を区別するのにとっても役立つ検査なんですね。
またリウマチ・膠原病の治療を始めて良くなるとこのCRPも下がるので、治療がうまくいっているかをみることもできます。

膠原病の診断に役立つ血液検査

抗核抗体

膠原病の代表的な検査です。聞きなれないかと思いますが、一言でいうと「細かい事は置いといて膠原病の体質があるかを全体的にみる検査」といったイメージでしょうか。
膠原病では自分の体を攻撃してしまう自己抗体というものが作られ悪さをします。その自己抗体には色々な種類があるのですが、病気を起こすものや特に悪さをしないものまで色々あるのですが、それはひとまず置いといて何種類もある自己抗体が全部まとめてどれくらいあるかを見る検査になります。
ちょっと大雑把な検査ですが、抗核抗体が陰性であれば大部分の自己抗体は無いと判断できます。
抗核抗体が高ければ、どんな自己抗体が高いのか?病気に関係するような自己抗体が出ているのか?といったさらに詳しい血液検査をしていきます。
この抗核抗体の結果はちょっと変わってまして、40倍以下、40倍、80倍、160倍、320倍、640倍・・・というように倍々で増えていく結果になります。
(細かくなるので詳細は省きますが、血液を何倍に希釈しても抗核抗体がしっかり見えるかで数値を出しているので変わった結果になります。)
40倍を超えると異常値という結果になりますが、40倍ではまず病気に関係するような自己抗体は検出されません。健康な人でも10-20%の方で抗核抗体40倍となります。
大体は抗核抗体が160倍を超えてきて、症状があれば病気に関係するような自己抗体が無いかの精密検査になります。

SSA抗体

シェーグレン症候群で陽性になる自己抗体になります。
眼や口の乾燥、関節痛、リンパ節腫脹などシェーグレン症候群が疑われるときに検査します。SLEなど他の膠原病でも上昇することがあります。
ポイントは、抗核抗体が陰性でもSSA抗体は高い可能性があるという事です。
細かい話ですが、抗核抗体は名前のとおり細胞の核にある自己抗体を調べる検査です。多くの自己抗体は細胞の核にのみあるのですが、SSA抗体は核の外にもあるんですね。ですので抗核抗体だけで安心せず、SSA抗体も一緒に検査する必要があります。
SSA抗体は陽性でも眼や口の乾燥症状がなく、シェーグレン症候群の体質だけで発症されていない方も多くいらっしゃいます。
症状がなければ治療もいりませんが、一つ注意するのが出産です。SSA抗体があるお母さんからお腹の赤ちゃんにSSA抗体が移動し、生まれた時に不整脈や皮膚症状を出すことがあります。
SSA抗体のある妊婦さんが出産するときは新生児センターのあるような大きな病院で出産することが必要になります。

dsDNA抗体

全身性エリトマト―デス(SLE)という膠原病で高くなります。
特に若い女性の方で、頬から鼻にかけて赤い湿疹ができたり、関節痛があったり、口内炎、微熱が続くなどの症状がある時に検査をします。抗核抗体が陰性であればまず検出されません。
このdsDNA抗体は治療してSLEが良くなると下がります。ですので、SLEの診断だけでなく治療してSLEがどれくらい良くなったのかも分かる検査になります。

RNP抗体

混合性結合組織病という膠原病などで上昇します。
寒いところで指が白くなるレイノー現象が見られたり、指全体がソーセージの様に腫れる、手全体が腫れているときなどに検査をします。これも抗核抗体が陰性であればまず検出されません。

セントロメア抗体、SCL抗体、RNAトポイソメラーゼ抗体

いずれも手指の皮膚が硬くなる強皮症という膠原病で上昇する自己抗体になります。
強皮症には手指の皮膚が硬くなるだけの限局性強皮症と、肺や腎臓など内臓に影響が出てくる可能性のある全身性強皮症の2つがあります。
ポイントは、セントロメア抗体が陽性の場合には手指の皮膚効果がメインの限局性強皮症、SCL抗体やRNAトポイソメラーゼ抗体が陽性の場合には、内臓に影響が出てくる可能性のある全身性強皮症と判断できるところです。

MPO-ANCA

血管炎という膠原病で上昇します。
ご年配の方で、微熱が続いたり、筋肉痛、足のしびれ、関節痛などがある時に検査をします。これは核の外にある抗体なので、抗核抗体が陰性でも高い事があり注意が必要です。
また血管炎を治療して良くなるとMPO-ANCAは下がりますので、治療してどのくらい血管炎が良くなったかを見ることもできます。

治療前の肺・感染症検査

KL-6(ケーエルシックス)

「間質性肺炎」という特殊な肺炎で高くなります。
肺炎というと、マイコプラズマ肺炎や肺炎球菌肺炎、最近では誤嚥性肺炎などを耳にされた方もいらっしゃるかと思います。そういった細菌や誤嚥が原因の肺炎ではなく、リウマチ自体で起きてくる肺炎になります。リウマチでは悪い免疫細胞が関節で悪さをしますが、肺で悪さをすると間質性肺炎を起こしてきます。KL-6が高い場合には、間質性肺炎が隠れていることがあるのでレントゲンやCT検査で肺を調べます。間質性肺炎がある場合には、飲み薬で一番使われるメトレートが使いにくいので、他の飲み薬や、生物学的製剤でリウマチの治療を行っていきます。

βDグルカン(ベータディーグルカン)

「カリニ肺炎(ニューモシスチス肺炎)」というカビの肺炎で高くなる検査です。
この肺炎の怖いところは、咳、痰、熱などの肺炎のイメージがある症状がみられないことが多いところです。
なんとなくダルい、食欲がない、息が切れるといった症状しかなく、気が付いたら肺全体に肺炎が広がっていたなんてことがあるんです。
また酸素が急激に下がることがあり、細菌が原因の肺炎が飲み薬の抗生剤で治ることが多いのと違って、その場で入院治療が必要になってしまいます。
こんな怖いカビの肺炎を早期に見つけるのが血液検査のβDグルカンなんですね。また当院ではカビ肺炎を予防するお薬を通院中の皆さんに使って頂いております。

T-spot(ティースポット)

これは結核の検査になります。正確には結核が過去どこかで体に入ったことがあり、体の免疫細胞が結核菌を覚えていると陽性になります。
「結核なんてなったことないよ」という方が多いかと思います。
ただ、周りに結核の人がいてそこから気が付かないうちに菌をもらってしまっていることがあります。
また若い頃に長引いていた咳、肺浸潤・肋膜炎と言われたものが実は結核であった可能性もあるんです。
その場合、結核菌が体の中のごくわずかに残って冬眠していることがあります。
もちろん、今は咳や熱などの症状もないですので周囲にうつりませんし、結核菌も冬眠していて悪さをしていません。ただ、結核が冬眠していることに気が付かないでリウマチの治療を始めると、ごく稀に結核菌が冬眠から目を覚まして悪さをしてくることがあるので、リウマチの治療を始める前に検査することが必要なんですね。もしT-Spot検査が陽性になった場合には、結核のお薬を1種類だけ1年間使わせて頂き、結核の除菌をしながらリウマチの治療を始めます。

HBs抗体・抗原、HCV抗体

こちらはB型肝炎、C型肝炎の検査になります。
人間ドックや手術の時に検査された方も多いかと思います。
しかし、大切なのはその時よりもさらに詳しい検査が必要な点です。
とくにB型肝炎に関して人間ドックや手術の時にはHBV抗原(こうげん)というものを調べますが、リウマチの治療にはそれだけでは不十分でHBV抗体(こうたい)というものを調べる必要があります。
人間ドックでうけたHBV抗原が陰性でも、HBV抗体が陽性場合、B型肝炎ウイルスが過去に体に入ったことがあることを示しています。
多くの場合、現在は体の中にB型肝炎ウイルスはいなくなっていますが、稀にわずかなウイルスが隠れていることがあります。
これに気が付かないでリウマチの治療を始めてしまうと、隠れていたB型肝炎ウイルスが増えてきて肝炎を起こしてしまうことがあるので、治療開始前にしっかり検査することが必要なんですね。
もしHBV抗体が陽性であった時は、実際にB型肝炎ウイルスが残っているかをウイルスのDNA量を測定して精密検査を行います。