リウマチの血液検査

新しいリウマチの血液検査って?
関節エコー検査と並んで、リウマチを診断するのに役立つのが、新しいリウマチの血液検査になります。
リウマチの血液検査で特に大切なものは、「CCP抗体」「リウマチ因子」「CRP」の3つになります。
この3つは検査の目的から大きく2つのグループ、「リウマチの体質をお持ちかどうかがわかる検査」と「リウマチを発症されているかがわかる検査」に分けられます。

リウマチの体質をお持ちかどうかがわかる検査→「CCP抗体」と「リウマチ因子」

「CCP抗体」と「リウマチ因子」が、このリウマチの体質があるかを見る検査になります。この2つはイメージとしては、「リウマチを引き起こす、悪い免疫物質の兄弟」といった感じです。
なぜ兄弟かというと、「リウマチ因子」は昔からある検査なのでお兄さん、「CCP抗体」は新しく発見された検査なので弟になります。

リウマチ因子(リウマチ反応)

このお兄さんの「リウマチ因子」の方は、昔から健康診断や人間ドックでも使われておりますので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。リウマチ反応とも呼ばれ、広く使われております。
このリウマチ因子が高いと、健康診断や人間ドックの結果で「リウマチの可能性があるので、リウマチ専門医に相談してくださいね」という判定を頂く事になります。
そんな認知度抜群のリウマチ因子なのですが、実は弟のCCP抗体に比べると出来がちょっとイマイチになります。
リウマチの方のうち70-80%の方で陽性になるのは役に立つのですが、リウマチになりたての早期リウマチの方でみると50%の方しか陽性になりません。逆にいうと、早期リウマチの半分の方は、リウマチ因子が正常という事になります。なので、リウマチ因子が正常だからといって「リウマチじゃないですよ」とは言い切れません。

また、リウマチ以外の病気でもリウマチ因子は陽性になってしまう事があります。例えば、リウマチ以外の膠原病(こうげんびょう)と呼ばれる免疫異常の病気や、結核(けっかく)や肝硬変(かんこうへん)というリウマチとは関係ない病気でも、リウマチ因子が陽性になる事があります。
さらに、健康な方でも陽性になることがあります。特に、年をとるにつれて、リウマチ因子が陽性になる方が増えるので、60歳以上の方だと10-20%の方でリウマチ因子が陽性になります。なので、よく健康診断や人間ドックでリウマチ因子が陽性と分かった方が、「私はリウマチなんだ、どうしよう」と大変ご心配され、ご受診頂く事があります。しかしリウマチ因子は正常でも陽性になる事がありますので、リウマチを疑うよう「手」「指」「足」の痛みがなければ、ほとんどの方が問題ありません。もし手や指や足に気になる痛みがある場合、そこで役立つのも「関節エコー検査」になります。実際にリウマチが関節の中で起きているのかを、気になる手指にエコーをポンっとのせる事で、しっかりチェックできます。

抗CCP抗体

認知度抜群だけど出来がちょっと残念なリウマチ因子の兄貴に比べて、知名度は低いけど出来が良いのが弟のCCP抗体になります。これはリウマチの研究が進む中で、新しく発見されたリウマチの原因となる物質です。
このCCP抗体の特徴は、リウマチ因子が苦手で診断が難しい早期のリウマチでも、75%の方でCCP抗体は陽性になる事です。そのため、関節エコー検査と併せて、リウマチになりたての方の早期診断に非常に大きく役立っております。さらに、リウマチ以外の病気や健康な方では、きちんと陰性になってくれることも、他の病気との区別にとても役立ちます。ですのでCCP抗体が陽性であった場合には、現在リウマチである可能性や、今後リウマチになる可能性がグッと高まります。
このCCP抗体は、「タバコ」や「歯周病」があると、体の中で作られやすいと言われております。リウマチを予防する為にも、またリウマチの治療が上手く行くためにも、「禁煙」と「歯周病ケア」が大切なるので、ぜひご協力頂けると幸いです。
さて、全体的には弟のCCP抗体の方が優秀ではありますが、それでもやはり完璧な検査ではありません。弟のCCP抗体は正常だったけど、兄貴のリウマチ因子だけが陽性のリウマチの方も実際にはいらっしゃいます。なので、兄弟が力を合わせるように、リウマチ因子とCCP抗体の2つを検査する事が大切になります。

リウマチを発症されているかが分かる「CRP検査」

最近では、新型コロナウイルスのPCR検査が広く認知されていますので、スペルが似ている「CRP検査」が混同されてしまいがちです。コロナの「PCR検査」ではなく、リウマチは「CRP検査」(シーアールピィー)になります。これは一言でいうと、「体のどこかで炎症が起きているかを調べる検査」になります。
リウマチの場合には、手指や足などの関節の中で、免疫の細胞が暴れて炎症を起こしているので、このCRPが高くなります。

このCRP検査は、リウマチと他の病気との区別に役立ちます。
例えば、「使い過ぎの手首の腱鞘炎(けんしょうえん)」、「加齢性の指の痛み」、「五十肩(ごじゅうかた)」といった整形外科さんがご専門の病気も、リウマチのような症状が出てきます。そんな時CRP検査をすると、これらの整形外科さんの病気では、リウマチのような強い炎症は起きていませんので、CRPは正常のままですので区別がつきます。

さらにCRP検査は、リウマチの強さや、治療によってどれだけリウマチ治まったかを見る事にも役立ちます。
最初からCRPが凄く高いリウマチの方ですと、リウマチの勢いが強いので、それに見合ったリウマチのお薬を選んでいこうという事になります。またリウマチの治療を始めた後に、CRPがキチンと下がって正常になっているかが、お薬でリウマチがしっかり治まっているかを教えてくれます。
しかもこのCRPは、クリニックの中で検査ができ、10分程で結果が分かるので、とっても便利な検査になります。

CRP検査の注意するところ

そんな便利で役立つCRP検査ですが、注意するところが2つあります。
注意1:CRPが正常だからといってリウマチの炎症が無いとは言い切れない

少し考えてみると、同じ関節でも、膝(ひざ)や肩(かた)のような大きな関節もあれば、手の指や足の指など小さな関節もあります。
この膝や肩のような大きな関節にリウマチがおきると、その中でおきる炎症も大きな範囲になりますので、血液検査をするとCRPが高くなります。
しかし、「手の指」や「足の指」のような小さな関節で、しかも1-2か所と少ない箇所でリウマチが起きている場合には、炎症の起きている範囲が少ないため、血液検査をしてもCRPは正常という事が、実はとても良くあります。そんな時、「リウマチが本当に起きているのか?」「リウマチの治療を始めるべきなのか?」と、僕らリウマチ専門医でも判断に迷う事があります。そんな時にも役立つのが、「関節エコー検査」になります。たとえ血液検査でCRPは正常でも、関節エコー検査で痛みのある「手の指」「足の指」をみると、関節の中にしっかり炎症がおきており、それを見てリウマチという診断になる事もよくあります。
また、すでにリウマチの治療をされている方で、「CRPは正常になったけど、まだ痛みが残っているんです」という場合にも、「リウマチが残っているのか?」「リウマチのお薬をパワーアップすべきなのか?」と、非常に迷う事があります。
この場合にも「関節エコー検査」を行い、痛い関節にリウマチの炎症が残っていればリウマチのお薬をパワーアップし、そうでなければリウマチの痛みでは無いですよとお伝えし、痛み止めなどで対応する事が出来ます。

注意2:リウマチだけではなく、他の膠原病、風邪やインフルエンザでもCRPは高くなる

もう一つCRPに関して注意が必要なのは、リウマチ以外の原因でも体の中で炎症がおきていればCRPは陽性となるという事です。リウマチ以外の膠原病(こうげんびょう)とよばれる免疫の病気でも、体の中に炎症がおきるとCRPは高くなります。風邪や胃腸炎などの感染症になって、特に熱が出ているような時にもCRPは上がります。また最近では、新型コロナウイルスのワクチンを打たれて熱が出た数日後に採血をされた方でも、CRPが上がっておられました。
ですので、もし手足の痛みがなく、リウマチは絶好調なのにCRPが高い場合には、リウマチ以外の原因を考える必要があります。特に、リウマチのお薬を使われている方の場合には、感染症が起きていないかを医師と一緒に確認する事が大切になります。