リウマチ性多発筋痛症
御高齢の方に起きやすい関節リウマチの親戚のような病気です。名前の様に関節リウマチに似ている(リウマチ性)が、痛みが関節ではなく筋肉痛(多発筋痛症)というのが特徴で、比較的多くの患者さんがいらっしゃいます。よく伺うお話が、「最近急に首・肩・腰が痛くなって、夜寝返りも打てないんですよ」「整形外科で五十肩って言われたけど、微熱もあるみたい」などです。
症状
- 首、肩、腕、腰、太ももの筋肉痛
(体の中心の大きな筋肉の痛みが特徴です、手指の小さな関節が腫れるリウマチとは違いますね) - 微熱、体重減少
- ある日突然痛くなった
- 夜、寝返りをうつのが大変
検査
リウマチの様に、この検査で診断できるというものがないので、しっかり症状をお聞きすることや、診察をさせて頂くことが大切です。「同じような症状を起こす他の病気が無いことを確認し、残ったのはリウマチ性多発筋痛症しかないからこれしかないだろう。」と診断します。同じ様な症状を起こす病気には、「①感染症、②悪性腫瘍 ③リウマチなどの他の膠原病」があります、これらが無いことを検査し確認することが大切です。
血液検査
- CCP抗体、抗核抗体、ANCA:陰性 リウマチなどの他の膠原病が無い事の確認
- CRP、赤沈:上昇 リウマチでも上昇しますが、リウマチに比べると高くなります
- T-Sliot、プロカルシトニン:陰性 結核や細菌でないことを確認します
- レントゲン、CT検査
- 肺癌や肝臓癌などの悪性腫瘍が無いことを確認します
- 肺炎や膿などの細菌がいないことを確認します
関節超音波
リウマチの診断だけでなく、リウマチ性多発筋痛症の診断にも役立ちます!
肩の関節・腱に炎症がある事を確認します
治療
プレドニン(ステロイドホルモン剤)が非常に良く効きます。
当院では、患者さんに体重や炎症の強さをみて、プレドニン3-4錠内服(15~20㎎)で治療を開始します。プレドニンを飲み始めると2-3日で筋肉痛が劇的に改善し、半分以上筋肉痛が無くなる方が多いです。
治療開始して1-2週間後に来て頂くと、「痛みがだいぶなくなりました、久しぶりに良く眠れたよ」と笑顔でみなさんいらっしゃいます。(この声を聞くと、私も凄く嬉しいです)
次に、症状、血液検査での炎症が改善しましたら、プレドニンをゆっくり4週ごとに減らしていきます。
5㎎以下まで減らせれば治療は成巧です。それ以上の減量は再発の可能性がありますので、5mgで固定するか、さらに減らしていくか患者さんと相談で決めております。仮に、プレドニンの減量で再発した場合には、少しプレドニンを増やしてその量で固定します。
例)プレドニン5㎎ 4錠 ×2週間
⇒1-2週間後に来院して頂き、採血・診察
血液検査炎症改善、筋肉痛改善を確認し、プレドニン減量
強皮症とは
なかなか聞きなれない病気かもしれませんが、一言でいうと名前のとおり「皮膚が硬くなる」病気です。
「最近、冬になると指先が真っ白くなってしまうのよね」
「手指がつっぱって動かしにくいわ」
などの症状が思い当たる方は強皮症かもしれません。強皮症は「①指先の皮膚だけが硬くなる限局性強皮症」と「②肺・腎臓・腸など内臓にも影響がでる全身性強皮症」の2つに大きく分けられます。
症状
- レイノ-症状・・・寒いところで指が真っ白くなります
- レイノー症状が酷くなると指先に傷や潰瘍を起こすことがあります
- 手指関節痛・こわばり・・・リウマチと違って、関節が腫れるのではなく皮膚が硬いために指が動かしにくくなります
- 指の腫れ・・・「ソーセージ指」とも言われますが、指全体がソーセージの様に腫れることが強皮症の初期に起こります。この時期はステロイドが効果的です
全身性強皮症のみにでる症状
- 乾いた咳、息切れ
- 胃もたれ、げっぷ、下痢
検査
診察
- 皮膚がつまめるかどうか。これで皮膚の硬さを確認します。
- 爪の甘皮延長、指先の傷・潰瘍チェック
血液検査
- 抗核抗体discrete型
セントロメア抗体 - 上昇 限局性強皮症で見られます
- Scl抗体
- 上昇 全身性強皮症で見られます
- KL-6
- 上昇 間質性肺炎(強皮症の肺炎)があるかをみます
- BNP
- 上昇 強皮症の心臓へのダメージをみます
- 胸レントゲン
胸CT検査 - 強皮症の肺炎(間質性肺炎)があるかをみます
- 腹部CT検査
- 強皮症の腸への影響を調べます
治療
- レイノ-症状
指先潰瘍 - 冷たい刺激で指先の血管がキューっと縮んでしまい、指先に血液がいかなくなるのが原因です。血液がいかない状況が多くなると潰瘍などの傷が指先にできてしまいます。その為、治療は血管が縮まらないように血管を開く薬(プロサイリン、ユベラ、血圧の薬)が中心になります。また何より冷たい刺激を指に与えないことが大切なので、手袋・お湯・カイロなど指を冷やさない事が大切です。もし潰瘍ができてしまったら、そこにバイ菌が入らないように毎日しっかりお湯で洗い流すことも心掛けてください。
- 指の腫れ(ソーセージ指)
- 強皮症の最初の頃にみられます。ステロイド剤が効き指全体の腫れをとってくれるので、当院では少量のステロイドを使用いたします。
- 乾いた咳、間質性肺炎
- 血液検査のKL-6が増えてこないか、半年ごとの胸レントゲンや胸CT検査で間質性肺炎が広がっていないか定期的に検査をすることが大切です。もし間質性肺炎の悪化があれば入院での治療も必要になるので、膠原病科のある病院にご紹介させて頂いております。
血管炎とは
膠原病(免疫細胞が間違って自分を攻撃してしまう病気)の一つで、特に免疫細胞が血管を攻撃してしまう病気です。血管と言っても、頭から足先まで体のあちこちにあり、血管の大きさも様々です。そこで、どんな場所のどんな大きさの血管が攻撃されてしまうかで「○○血管炎」とそれぞれ名前がついております。血管炎の種類によって症状や治療薬は異なってきますが、まず最初はステロイドを沢山使った治療となり、これは入院で行われます。
当院では入院治療が必要な血管炎の症状を見逃さないこと、また入院治療で良くなった血管炎が再発しないように外来で検査・治療を続けさせて頂いております。
症状
- 発熱
- 倦怠感
- こめかみの痛み
- 頭皮の痛み
- 空咳
- 足のむくみ
- 関節痛
- 筋肉痛
検査
血液検査
- CRP、ESR
- 上昇 血管炎による炎症があるかを見ます
- MPO-ANCA
PR3-ANCA - 上昇 ANCA関連血管炎という種類の血管炎で上昇します
- KL-6
- 上昇 間質性肺炎の合併が無いか調べます
- BUN、Cr
- 上昇 腎臓に病気の合併がないか調べます
- 胸部レントゲン
- 間質性肺炎の合併が無いか調べます
- 胸部CT
- レントゲンでは見つからない間質性肺炎の合併が無いか調べます
- 関節超音波
- こめかみにある動脈を調べ、側頭動脈炎という種類の血管炎をしらべます
治療
- ステロイド、免疫抑制剤(アザチオプリン、タクロリムスなど)
- 最初の治療はステロイドを多く使用するので、専門病院で入院して行うことになります。
- 治療の結果、血管炎がよくなりステロイドが外来で使用できる量(PSL30㎎以下)になりましたら、当院の外来で加療することができます。
- 血管炎が再発しないように、症状・検査結果を確認しながらステロイドを減量し、通常はプレドニン5㎎前後を目指しています。